アメリカ駐在妻のLittlepondです。
2018年に夫の転勤でマサチューセッツ州に移住しました。
駐在妻ですが、フリーランス契約で日本の会社と取引きをしながら在宅で働いています。
この記事にたどり着いた皆さんは、パートナーの海外赴任についていくご予定で
「駐在妻(夫)でも現地で仕事はできるの?」
「税金やビザはどうするの?」
という疑問をお持ちだと思います。
駐在員の妻をしながらでも、海外で働くことはできます。
しかし、そのためにはパートナーや移民弁護士さんや税理士さんと協力して、日本で用意することがたくさんあります。
そこで、これから海外赴任へ帯同して渡航先でも働きたい方が、日本で確認しておくべき就労権や税金のことを、現役アメリカ駐在妻で在宅ワークをしている私のケースをもとに基本的なことから解説していきます。
この記事を読んでいただければ、海外駐在員の妻が現地や日本の会社には所属せずにフリーランスで働き、日本での収入がある場合、どのような手続きが必要なのか。
副業として海外にいながら日本で収入を得る場合にやるべきこともおわかりいただけます。
配偶者・家族・帯同ビザで働ける国は?
配偶者が働ける国とは?
駐在員が多い国で、配偶者・家族・帯同などのビザ所有者が働ける国があります。
(私の知っている駐在妻さんたちが実際に仕事をしている国はこちら)
・アメリカ(L・Eビザなどの配偶者)
・イギリス(家族ビザ・配偶者ビザ)
・ドイツ(家族ビザ)
・シンガポール(帯同家族ビザ)
・ニュージーランド(労働許可取得者の帯同者)
その他の国は、パートナーの会社の移民弁護士に確認してみてください。
就労ビザが必要な場合や、個人事業主として登録ができればOKな国もあるようです。
就労権、労働許可が取れる?
帯同ビザ取得者が働くには「就労権」などの権利を申請します。
アメリカ、シンガポールなどは、ビザに加えて就労権・労働許可証が必要です。
米国の就労権(EAD)
私はL2(L1ビザの配偶者)のビザ申請時に、同時にEADも申請しました。(取得には$410かかりました)
アメリカではEビザ、Lビザ配偶者はこのEADを取得すれば働けました。
在宅ワークでもアルバイトでも、これがあればどんな雇用形態でもOKです。私はアメリカ渡航前に申請し、到着後約1ヶ月でEADカードがアメリカの住所に届きました。
しかし2022年よりE・L・Hビザ配偶者はEAD取得なしでも働けるようになりました。
今後アメリカへ渡航する方で、E1、E2、L2、J2、H4ビザはEAD取得は必要ありません。
(すでに取得している人は、一度出国してI-94の更新が必要になるようです)
これから出国される方は、必ず担当の移民弁護士さんに詳細を確認してください。
パートナーの会社が駐在妻が働くのを許可するか?
会社によっては、駐在員の妻が働くことを許可していないこともあります。
海外で働けるステイタスが取得できるのに、駐在妻が働けない理由の一つです。
帯同ビザでも働ける国なのに、いろいろな理由でパートナーの会社が妻の就労を許可しないパターンはよくある話です。
私は夫の会社の駐在員担当者、移民弁護士に、直接自分でもお願いをしました。
「こっちは仕事をセーブして海外転勤に帯同してやるんっすよ」
「仕事くらいさせてもらえなかったらなーんにもやることないし、ヒマすぎて精神が崩壊しちゃったら、どう責任とってくれるんですか?」
「妻が病んじゃったら、夫のサポートなんてできっこないっすよね」
「だいたい海外駐在員を派遣するようなグローバルカンパニーだなんてエラそうに名乗っている会社が、妻のキャリアを完全に無視するのはいかがなものでしょう?」
「夫の収入だけでなんとかなるだけの金払ってんだから、働きたいとかぐちゃぐちゃ言うんじゃねーよ、と、妻の主張を一蹴するような態度をとる会社もあるようですが、今どき時代錯誤も甚だしいんじゃございませんこと?」
「妻が働くことはOKしてもらえますよね?」
「ってことで、就労権の手配もよろしくお願いしま〜す!」
という内容を、オブラートに包みまくりのめちゃくちゃ丁寧な言い方にして夫の会社に提案したところ、すぐにOKしてもらえました。
パートナーの会社に渋られたら、夫婦での交渉しだいです。
「駐在員の妻が働いた前例がない」「手当は十分に払っている」「外で働くと保険が効かない」などと言われるかもしれませんが、ヘコタレてはいけません。
なんのために駐在員担当の移民弁護士がいるのか?って話です。
駐在妻が働くために、まず超えなければいけない「壁」はココです。
納税はどうしたらいい?
アメリカで在宅ワークで日本の企業から仕事を請けて働くにあたり、日米の税理士や税務署、私の雇用先に確認したことをカンタンにまとめてみました。
納税はどちらの国?
住民票を日本から抜く・抜かないに関わらず納税は「在住国で」が基本です。
そうしないと「二重課税」になってしまうからです。
租税条約に加盟している国であれば「実際に住んでいる国」で納税すればOKで、二つの国へ税金を払う必要はありません。
「住民票が日本にある」
「報酬は日本の口座に振り込み」
だとしても、海外で働く日本人が日本で所得税を払う必要は基本的にはありません。
海外在住者が日本で所得税の確定申告が必要なケースは以下のとおりです
・事業所、事務所などが日本にある
・資産の運用・保有・譲渡などによる収入
・土地の譲渡・不動産の賃借料
・利子・配当・貸付金利子・使用料
・日本で行なった業務への給与・報酬
・生命保険の年金・定期積立の給付補てん金・利益分配
海外在住で日本の収入があっても、これらに該当しない報酬は日本で納税の義務はありません。フリーランスで海外で働いても、基本的に日本に所得税を納める必要はないのです。
(駐在妻がすでに勤務している会社からリモートワークなどで仕事を継続する場合は、会社の税理士さんと相談しましょう)
日本の取引先に確認すること
租税条約について
まず、租税条約対象国であることを確認し、外国税額控除を依頼します。
これは、経理担当者に海外在住のため源泉所得税を差し引かないようお願いすることです。
私は現在、日本のクラウドソーシングで仕事を請けていますが、海外在住である旨を伝え、基本的には所得税を引かずに報酬を支払ってもらっています。
そのためには、雇用先との「租税条約の締結」作業が必要です。
以下の書類を提出すると、雇用先が管轄の税務署に「この人は海外在住だから、日本の所得税と復興税は徴収しませんよ」と届け出ることができます。
こちらを雇用先から求められたら提出しましょう。
(1)租税条約に関する届出(使用料に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除)
(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/1648_41.htm))
(2)特典条項に関する付表(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/5320/01.htm)
(3)居住者証明(原票)
消費税・所得税について
消費税は日本国内での税金なので、海外在住者は報酬に消費税を上乗せして請求は基本的にできません。請求書を作成する際には注意しましょう。
外国税額控除をしていない場合は、日本在住者と同じように所得税を差し引かれます。日本の税務署へ確定申告をすれば還付金として所得税を取り戻せます。
そのためには、海外から日本の税務署へ確定申告をする必要があります。
海外から所得税の申告をするには?
納税管理人の設定
海外から確定申告をする可能性があるなら、納税管理人(実家など)を設定します。
渡航する前に、海外から確定申告をするかもしれないと税務署に問い合わせたところ、納税管理人を登録をしておくように言われました。
納税管理人は、海外在住者の代理人として日本での税金の届け出などを行う人のことです。
取引先からの支払調書は納税管理人の住所へ郵送するよう依頼しておき、その管轄の税務署へ所得税の申告書を郵送すると、日本で源泉徴収された所得税は全額還付されます。
海外転勤と納税管理人の選任|国税庁から「納税管理人の届出書」をダウンロードし、記入して管轄の税務署へ提出します。税務署からのお知らせや、還付金の支払いについての連絡が納税管理人に届くようになります。
海外からの確定申告の方法
イータックス
海外からでもe-Taxは可能です。
しかし、海外へ転出届を出すと基本的にはマイナンバーカードも返却することになり、カードリーダーなども必要なので、私はやっておりません。
海外から郵送
所得税を源泉徴収されてしまった場合、その会社の税理士から年明けに届く支払調書を納税管理人である実家からアメリカへ送ってもらい、国税庁HPから所得税の申告書を作成し、プリントして日本の税務署へ郵送(国際郵便)で確定申告をしています。
確定申告時期に実家へ「支払調書が来たら2月中にアメリカへ郵送して」とお願いし、3月15日頃までに日本の税務署へ届くようにします。
毎年、日本の取引先で源泉徴収されてしまう会社が数社はあるので、年間に数万円ですが還付金として申請するようにしています。
一時帰国時に日本で提出
管轄の税務署で確認したところ「前年度の所得税の申告書であれば、翌年の一時帰国時でも書類は受け付ける」とのことでした。
税務署にもよるかもしれませんが、基本的には海外在住と伝えればOKだそうです。
在住国での確定申告は?
在留国での確定申告(タックスリターン)は、その国により方法や税率が違います。
基本的にはパートナーの会社の税理士にお願いしますが、妻の収入はたとえそれが日本でだけでも、その国で確定申告をする必要があります。
参考までに、アメリカは税理士に日本の収入や残高、不動産収入、株式などもすべて夫婦で合算で申告します。妻に収入がなくても、妻名義の銀行残高が一円でもあれば、それも申告しなければいけません。
妻は保有財産(株式・不動産・銀行利子など)と、その年の一番高額な銀行残高を提出します。「その年にいくらの収入があったか?」ではなく「その年に一番お金を持っていた時はいくらだったのか?」を申告するのが日本との大きな違いです。
なので、いつでも「日本の銀行残高」をネットで確認したり、スクリーンショットなどのデータで残高を提出できるようにしておきましょう。
給与収入がある場合は、支払調書、源泉徴収票、請求書、領収書などのデータも提出します。
インターネットバンキングなら海外からも残高照会ができるので、よほどのことがない限りはそのデータでOKです。
まとめ
【帯同ビザで働ける国・就労権】
・帯同・家族・配偶者ビザで働ける国か、移民弁護士に確認
・就労権や労働許可証が必要な国であれば、ビザと一緒に申請
【パートナーの会社】
・妻が働くことを許可するか確認
・帯同者として働きたいことを最大限アピールできるならしておく
【日本の税金・確定申告】
・納税は住民票や銀行口座に関わらず「在住国で」が基本
・海外在住者は日本で所得税を納める必要はありません
・海外在住者は報酬に対して消費税分を請求することはできません
・所得税を差し引かれたら確定申告で還付されます
・日本の確定申告は海外からイータックスか郵送でできます
【赴任国での確定申告】
・滞在国での確定申告は日本の収入や財産をすべて申告するケースあり
・税率や申告方法はその国の税理士に確認
以上です。
基本的なことではありますが、この記事はあくまでも私のケースの紹介です。
詳しくは必ずパートナーの会社の移民弁護士さん、税理士さんなどに確認してください。
この記事が海外で「駐在妻として働きたい人」のお役に立てれば嬉しいです。
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